◆ AutoCADでのラスター地形図取扱
- 地質調査結果の取りまとめ図面として、まだまだラスター図面を取り扱う機会は少なくないでしょう。1/5000の森林基本図、1/2500都市計画図、1/1000道路台帳など。そこでは主にモノクロ画像の白図として管理されている場合が多いと思われます。
- そのファイル形式は拡張子がTIFの画像ですが、TIFFG4(CCITT)といってモノクロ2値高圧縮の特殊な画像です。業界標準ではありますが、読み込みはできても書き出しができないイメージソフトが多いので要注意です。ファイルサイズが小さい割に精緻な地形図として使用することができます。
- このTIFFG4画像はAutoCAD上では、外部参照(以下イメージアタッチ)で組み込んで使用します。このラスター地形図は白地部を透過設定にできることができ、重ね合わせをする場合などに重宝します。また背景地形図を控えめな灰色に設定することも可能です。
◆ アタッチする画像形式について、またイメージアタッチする前に
- アタッチする画像の画素(ピクセル)数と解像度(DPI)を把握しておきましょう。通常大判のラスター地形図は400dpiのTIFFG4形式、印刷イメージの大きさそのままで組み込まれます。デジカメ写真は180dpiのJPG形式、ネット上からの生成画像などは画面解像度96dpiのPNG形式などが良く使用されます。後者の2つの画像形式は実寸に対する縮尺の概念がファイル形式内に保存されている場合と、そうでない場合があります。
- そうしたことに対応するために、先ずAutoCADのモデル空間でのメニューコマンド、形式(O)単位管理(U)で単位管理を意図する単位に設定しておきます。通常は作図基本単位1に対して、挿入尺度単位を「ミリメートル」と設定しておきます。
◆ ラスター地形図(TIFFG4画像)や写真画像の組込
- AutoCADのモデル空間で、メニュー・挿入(I)・ラスターイメージ参照(I)を実行し、対象とする地形図ファイルを選択します。
- TIFFG4画像ファイルは2値画像とも呼ばれ、通常ファイルに縮尺のパラメータが保存されているので、印刷実寸のイメージサイズで組み込まれます。
- 具体的には、400dpiのTIFFG4画像、横7180ピクセル縦2761ピクセルを、モデル空間に尺度1で組み込むと、右図の通り横幅7180÷400×25.4=455.93mm、縦2761÷400×25.4=175.324mm、という実寸サイズで組み込まれます。
- ところが解像度のパラメータが保存されていても、縮尺のパラメータが保存されていない写真画像では、画像組込時に尺度を組込サイズの幅mmと想定して組み込む必要があります。撮影画素数や解像度に関係なく、組込後の幅をmmで尺度設定すれば良いでしょう。
◆ 組込画像と地質図や地質断面図の着色について
- TIFFG4地形図画像を組込んで地質図を作成する場合には、ハッチング塗りを地形図上に重ねることになります。ハッチングが地形図の上にあると、地形図が隠れて見えなくなるため、ハッチングを地形図の下層に配置する必要があり、地形図を透過設定にすると、色鉛筆で重ね塗りしたような感じの図面ができ上がります。右図1)2)参照。
- ところが、AutoCADのハッチング塗りはsolidベタ塗りで印刷すると濃くどぎつい印象を受けます。これを回避するためにハッチングを網掛にするか、また印刷設定で色毎の薄塗り設定をすれば、色鉛筆での着色図面のとおりにきれいな図面に仕上げることができます。
- 以上の方法は、透過設定にできないカラー図面では網掛着色しかできないことを示しています。ですがAutoCAD2012のバージョンから透過塗りの機能が搭載されて、上図3)のようにカラー組込図面上にでも透過(薄塗り)ハッチングが可能となりました。
◆ 複数のラスター図面の集成について、最終着色成果形態
- 複数のTIFFG4画像の図面を組み込み、それらを連結集成する必要性が生じることがよくあります。具体的には連続した道路台帳を繋いでいく作業を想定してみました。
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- TIFFG4画像は透過できる上に、モノクロ2値画像ですからイメージに着色設定が可能です。右図上段のように隣り合う図面に異なる着色設定をして重ねます。そうすると接合部の集成作業が非常に分かり易くなります。
- 右図上段では接合部の境界線をわざと残していますが、精度良く重ね合わせができたなら、一端AutoCADを終了します。そして各画像ファイルの接合部の境界線を消去してしまえば、再読み込み後での仕上がりは、接合部がほとんど分からないほどになります。もちろん組込イメージのフレーム枠は非表示にします。
- 上項までの作業に加えて、組込イメージのフレーム枠を非表示にする前に、道路台帳の組込画像を控えめな灰色設定にしておきます。その後、専門技術者の主たる作業であるスケッチや地質境界などの情報を黒色設定で加筆していけば、右図下段のようなメリハリの効いた見易い地質平面図ができあがります。
◆ 測量CAD図面と背景ラスター図面の集成について
- 道路改良計画や落石詳細調査などの目的で、道路沿いは縮尺1/500などの実測図面を作成し、上方斜面は縮尺1/2500の航測ラスター図面を背景図として用いる場合がよくあります。
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- 右図上段の様な場合を想定してみましょう。集成接合した都市計画図2葉の範囲の中に、道路沿いの範囲に平面測量の成果として実測図が含まれています。
- そこでは重ね合わせるまでは必要な背景図の範囲が、重ね終わった段階で精度の悪い背景図として不要になります。
- 測量実測図の範囲は、右図中段のとおり都市計画図と重複して見難くなりますので、両図面の位置調整ができた後は削除する必要があります。イメージファイルを直接編集して、削除することも可能ですが、現実的ではありません。
- AutoCADの機能として、実測図との重複範囲を非表示にすることが可能です。実行するコマンドは、修正(M)・クリップ(C)・イメージ・(複数ある場合には該当イメージ枠を選択)・境界作成(N)・ポリゴン(P)です。
- イメージのフレーム枠外周をなぞり、最後に閉じる(C)を押します。そうすると囲まれた範囲を表示して、囲まれなかった範囲が非表示となってクリップアウトされた状態となります。
- 右図下段が重複範囲をクリップアウトした状態であり、中段図面と比較して図面全体がスッキリしています。また実測図のCAD図面範囲とラスター背景図とが上手く接しているのが、拡大図で視認できます。
- 本項での背景図クリップアウト作業は、重複範囲の外周をポリライン作図することを意味します。
- 具体的にはクリップするイメージを選択してから、右図上段Aの1〜13の順にポリラインクリックして最後に閉じる(C)を押します。そうすると右図中段Bのように測量実測図範囲が非表示となってクリップアウトされます。
- このポリラインは後で端点編集が可能ですから、背景図と実測図との境界をラフになぞっておけばよいでしょう。ただし通常のポリラインのように端点の追加ができないので、細かくポリラインクリックをしておくことをお薦めします。
- このクリップアウト機能はAutoCADの全各バージョンに実装されており利用できます。クリック作業そのものは図面が重なって見難い場合が多いので、予め測量実測図の周囲に着色したポリラインを図化しておき、クリップアウトのポリラインクリック時にスナップを効かせて作業すれば、クリックし易いでしょう。
- また新しいAutoCAD2016以降のバージョンでは、島状の非表示領域をポリラインで確定させておき、クリップイメージ枠の境界作成(N)でポリライン(S)を選択し、非表示境界のポリラインを指定すると、クリップ境界を反転できるようになります。
- クリップライン上に端点とは異なるハンドルマークがあるため、そこにスナップすると右図下段Cのように表示されます。そのままクリックすると、中段Bと同じように非表示領域が反転されます。随分とクリップアウト作業が分かり易くなっていますね。
- こうしたクリップアウト作業は、DWG外部参照ファイルや、ビューポートに対しても設定可能であるので、複雑な図面を作成する際には便利な機能です。